常識外のペン粒:ローターさんがプレーで示す「打点設定を敢えて同じにする意義」続き

ローターさんとはゲームはせず、オールを延々としてはいたのだけれど、オールをしている分感情が見えやすかった。

私が得点する際、ローターさんのミスからぶち抜いて点数を取った際は悔しがるし、ローターさんは手なりでラリーをしているのに対しオシャレに決められたら感嘆するし、催促からカウンターを狙われて「釣られた」と思えば考え始める。


わかりやすく感情を出して貰えれば私としても考察のしがいがある。
「待ちの意識を丸裸にしてやろう」そう思いながら様子をうかがっていると、ペン粒らしからぬ面白い設定が見えてきた。

ペン粒の待ちといえば一般に守備に重きを置く為全面待ちないし7:3でクロス待ちでストレートもケアすることの方が多いイメージ。守るためならば自然な考え方とは思う。

だが彼は、基本的には浅く低く入った際は全面待ち、自分のボールの質が良く相手から強打されることが無いと見るや次の返球を攻める姿勢で待っている。高めに入った際は経験的に一番きそうなコース待ち。主にクロス待ちが多い。
対ペン粒で狙われやすいコースを張り、よくされる待ちを徹底していた。
加えて立ち位置としてはある程度ストレートも締めている。簡単なストレートは触られることが多いが、ストレートとフォアミドルの択を見せてさえおけばストレートが抜けないことは無いような印象。
ワンコースで縛れていれば守備が固いのにも関わらず、ある程度ストレートを切るという攻めっ気豊富な待ち方。
といってもここまではペン粒以外ならば普通。
ペン粒だと思わなければ、結局ストレートが抜けるし私としては非常にやりやすい。
オールをしばらく続けても、やはり抜けることの方が断然多い。

オールだしそこまでピンポイントの待ちはするわけが無いかな

そんなことを考えながら横強めのサーブから3球目でフォアストレートぶち抜き。やっぱり抜けた。
もう一度同じサーブから同じ展開で、さっきと同じくらい空いているフォアストレートにぶち抜きを、、、とはならず、さっきとは一転して、まるで張っていたかのように触られ、ペン粒のバックブロックバッククロスを抜かれる。
「よし」
ちっちゃくそんなリアクションを取ったのを私は見逃さなかった。
間違いなく張られてた。。

同一展開を続けたのもあったのだろう。だが、この局面で間違いなく来るはずとした確信が彼にはあったのだ。

それ以降も完全にブロックされることはあったが、毎度というわけではない。
全く動けずノータッチの場面の方が多かったが、ブロックが決まる時はあらかじめ読まれてたかのような動きを見せた。
この場面ではここに来るはずとしたメタが入ったようなもの。

普段彼が普通の裏裏と打っていないのもあってか待ちづらさもあったようだ。それにしてもどうも彼が点数を取りたいと気合いを入れた様子が見られた直後に、心を読まれたようなブロックをされることが多かったように思える。

常にメタを入れてはこない、欲しい時だけにメタを入れてきているような印象が強い。




ローターさんはどうも要所でのみメタを利かせて薄い待ちを取り、そうでない場合は広い受けを好むタイプだったように思える
そして徐々に私に関して情報量が増えていく毎に、複数コース待ちやゾーン待ちでは無く、単コース待ちにメタを張ってくる状況は増えていった。
オールの中で私の傾向を掴んでいったらしい。
けれど私も相手の状況を見て触られないコースを選ぶ余裕があった為に、全てシャットアウトするまでには至らなかったようだ。
だが、点数が欲しそうな時ほどピンポイントの待ちを使ってくるあたりに、どうもローターさんの本質が見え隠れしているよう思える。

つまりは基本はメジャー待ち、勝負どころではマイナー待ちをするタイプ。広く期待値を稼ぐタイプではない、非常に好戦的な守備を好む。
全てを来そうな確率に委ねるのではなく、あくまで情報を分析して心理戦を仕掛けて勝負所で一般にマイナー待ちと呼ばれるような微妙な待ちを通しに来るタイプだ。

例えるならば、デュースの局面で相手がサーブを変化させず地味に攻めるタイプか、それともド派手に攻めてくるタイプのどちらかを読んだ後に、それを見透かしたかのような勝負手を放ってくる。
試合に極端に強いタイプのように思えた。

試合中の待ちとしては期待値信者は以下の二つのどちらかの立場を取るだろう。
それは、
・状況関わらず一番あり得るコースを待つ
・状況によっては一番ありうるコースを待つ

の2つだ。


前者においては、ドライブマンであればクロスに打つことが多い為、それを張る方がコースが当たりやすい。加えてバックサイドやフォアミドルなんかを狙えれば来るコースを絞ることが出来るため、「普通に考えればどんな人でも一番ありうるコース」を待っていさえすればミスはし辛い。
ブロックが生命線の守備専の粒プレイヤーには最も重要な待ち方と言える。

後者においては、その人をメタったピンポ読みの側面が色濃く出ており、相手の情報を適切に処理できなければ常に続けることは難しい。

いくら攻めが強い粒だと言えど、ブロックからの点数も欲しい。
ただ広い受けをしていても待ちきれなければ止められない。ブロックするならば、好戦的にブロックを狙おうとした意図が強く出ていた。

その好戦的にピンポイントでブロックを通す方法としても、相手の卓球の特長や傾向を掴むだけではなく、ある程度心理面も読んでくるようだ。
「この展開は前に上手くいったし、自分の弱点としてもばれているだろうから狙ってくるはずだろう」
なんていう風に。
自らが弱点を理解し、相手に弱点を知られていると知ることができるのは、情報戦においてアドバンテージとなる。
いくら弱点といえど狙ってくるコースがあらかじめわかっているのならば対応の仕方はいくらでもある。
心理をくみ取り、展開を誘導して相手の思惑に半分乗っかってさえしまえば、それは相手にとって有利な展開ではない。相手にやらすことに成功している展開、自分にとって有利な展開となる。




粒でプッシュさせておけばサンドバックにできるぞ

と喜んで両ハンドを振りに行き、確かに気持ち良く入るパターンもあったのだけれど嫌味を付けられた格好だ。ゲームしてたらまあ負けてただろうなとも思わされた。

といっても2択を状況に応じて切り替えるというのはなかなか勝負師な卓球だろう。
ちょっと間違えればすぐに頓死するしん。
・状況関わらず一番あり得るコースを待つ
・状況によっては一番ありうるコースを待つ

前者にしろ、後者にしろ攻撃的な場合と守備的な場合でそれぞれ捉え方も異なってくるだろう。
加えて彼が見せたのは「攻撃的な守備」、読み切ったブロックパターンと水谷よろしくな展開。
「攻撃的な守備」にしても、誰にでも使える汎用性のある展開と、固有の相手にしか使えない展開の2種類ある。
ペン粒という特殊な戦型でその道の上級者だからこそのバリエーションなのかもしれないが、なかなかに趣向が凝らされた戦術を駆使された。

ここまでこれだけ書いてきたが、やっぱりよくわからないことを永遠に書いてきた気がする。
結局何がなにがいいたいかって、ローターさんを言葉で表すのは難しいということ。
やっぱりフラン氏の解説が欲しいものですね。